通関士4-11. 関税額の確定 (1) 賦課課税方式
トピックの概要
この記事で学ぶこと
- 賦課課税方式
- 申告納税方式
- 賦課決定の手続きの流れ
- 賦課課税方式のまとめ
2種類の関税の確定方式
関税の確定方法は、関税法によって決められています。具体的には、冒頭で説明した通り、次の2つの方式があります。
- 賦課課税方式:税関長が納付すべき関税額を確定する方式
- 申告納税方式:納税義務者の自主的な申告によって関税額を確定する方式
賦課課税方式では税関庁が税額を決定しますが、輸入者が輸入する物品について正確な情報を提供するために申告を行うこともあります。
一方の申告納税方式では、どのような物を輸入しようとしているかを輸入者(または代理人の通関業者)が申告します。また、関税額も輸入者(通関業者)が計算して申告することになります。
賦課課税方式
それでは、賦課課税方式について詳しく見ていきましょう。これは、税額が税関長の処分によって確定される方法です。
「処分」と聞くと処罰のようなイメージを持つかもしれませんが、ここでは、「関税法に基づいて、税関が輸入者に納税の義務を負わせる行為」を意味します。
賦課課税方式の対象
こちらが賦課課税方式の対象になる貨物や税金の種類です。細かい分類まで含めると30以上ありますが、代表例は次の通りです。
- 入国者の携帯品
- 入国者の別送品(商業量に達しない場合)
- 外交官免税を受ける貨物
- 通関手帳(カルネ)により輸入される貨物
- 国際郵便物(課税価格が20万円以下)
- 過少申告加算税
- 相殺関税
これらの例は、下記のようにいくつかのパターンに分かれます。
①簡易な手続きにより関税が免除または軽減される場合
- 入国者の携帯品
- 入国者の別送品
- 国際郵便物(課税20万円以下)
② 特殊な通関手続きにより関税が免税になる場合
- 外交官免税を受ける貨物
- 通関手帳(カルネ)により輸入される貨物
③ペナルティとしての税金
- 過少申告加算税
- 相殺関税
すべてのパターンに共通しているのは、税額を輸入者が計算するのではなく、税関が計算する方が適しているということです。
たとえば、入国者の携帯品や国際郵便物の場合、輸入者は関税の計算方法に詳しくないことが多いでしょう。そのため、輸入者に計算をさせるより、税関が計算した方が効率的で正確なのです。
賦課決定の手続きの流れ
賦課決定の手続きの流れについても見ていきましょう。輸入申告を要する場合と、輸入申告を要しない場合に分けて説明していきます。
A: 輸入申告を要する場合
入国者の携帯品、別送品などは、下記手順で輸入申告することが必要となります。
- 輸入者は入国審査の後に、税関職員へ携帯品・別送品申告書を提出する
- 税関が申告書の内容を確認して、関税等の税額を計算する
- 輸入者が関税等の税金を納付して荷物を受け取る
この場合は、輸入者が貨物内容を申告して、税関が関税額を決定します。
B:輸入申告を要しない場合
課税価格が20万円以下、かつ税金が30万円以下の国際郵便物については、申告は必要ありません。下記流れで、輸入手続きが進行します。
- 海外からの郵便物が国際郵便局に到着する
- 国際郵便局に駐在する税関職員が郵便物の送り状やインボイスを見て、関税額を計算する
- 税関職員が「国際郵便物課税通知書」を作成して、郵便局へ引き渡す
- 郵便局が郵便物を受取人 (輸入者) に配達する
- 配達時に税金を支払い、郵便物を受け取る
この場合、輸入者自身が輸入申告をする必要はありません。税関職員が郵便物についている書類を見て内容品や金額を確認するためです。
賦課課税方式のまとめ
賦課課税方式でも、輸入申告が必要な場合と不要な場合があることがわかりましたか。2つのパターンに共通しているのは、輸入者には特に通関や関税についての深い知識が求められていないということです。
輸入者にとっては、簡単な手続きで輸入することができるというメリットがあります。一方、どうやって関税額が決まったかがわかりにくいというデメリットもあります。
まとめ
今回は、「賦課課税方式」と「申告納税方式」という2つの関税確定方式があること、そして賦課課税方式について解説しました。
賦課課税方式では、通関業者などの通関に関わっていない大多数の人が関わってきます。関税について詳しくない者が輸入する際にも円滑に輸入手続きが進むように設計されていることを理解しておきましょう。