通関士4-10. 課税要件 (2) 納税義務者
カリキュラムの概要
4つ要件があったけど、何やったか覚えてる?
これらの要件が満たされると課税義務が生じる、ということだったと理解しています。
今回は2つ目の要素である、納税義務者について解説していくで。間違いやすい用語が多いから気をつけてな。
このカリキュラムで学ぶこと
- 納税義務者とは
- 原則的納税義務者
- 特別納税義務者 (連帯納税義務者と例外的納税義務者)
課税要件についてのおさらい
課税要件とは、関税を課すための基本的な条件のことであり、次の4つの要素から構成されます。これらの要素が揃うと、課税が行われる仕組みです。
・納税義務者:誰が関税を納付するのか
・課税標準:課税対象となる貨物の価格や数量はどのくらいか
・税率:どの税率で関税を課すか
前回は、課税物件について解説しましたね。言い換えれば、関税を支払う対象となるアイテムや商品と考えることができます。
今回は二つ目の要件である、納税義務者について説明していきます。
納税義務者とは
納税義務者とは、関税を納付する義務がある者のことです。基本と特別の2つのケースを覚えておきましょう。
基本:原則的納税義務者
関税の納税義務者は、原則として貨物を輸入する者です。貨物を輸入する者のことを、関税法や通関の実務においては、「輸入者」と呼びます。これは最も基本的なパターンであり、想像しやすいですね。
連帯納税義務者
連帯納税義務者とは、輸入者と連帯して納税の義務を負う者のことです。この連帯納税義務者における納税義務の種類には、次の2パターンがあります。
1. 通関業者の補完的納税義務
2. 総合保税地域における貨物の管理者の連帯納税義務
これら2つのうち、貿易や通関に携わる方が関わる可能性が比較的高いのは、「1」の通関業者が連帯納税義務者になる例です。次のすべての条件を満たす場合に、通関業者は輸入者と連帯して納税義務を負うことになります。
条件 | 備考 | |
1 | 輸入許可後に、納付すべき税額に不足があることが分かった場合 | 通関業者や税関が書類を見返していて気付く場合が想定されます |
2 | 輸入者とされた者の住所が不明である、または、その者が「私は輸入者ではない」と申し立てた場合 | 例えば、通関業者が輸入者に問い合わせたけれど、連絡がつかないといった状況、また、通関業者が誤った会社を輸入者として申告してしまったというケースも想定されます |
3 | 通関業者が、誰から通関業務の委託を受けたかを証明することができない場合 | 通関業者は輸入者から委任状という書類を受け取ってから通関の代理をすることになっていますが、委任状を取り交わしていなかったときに、左記の状況になります |
どうしてこのような、通関業者が納税義務を負うという特例があるのでしょうか。理由はいくつかありますが、そのうちの一つは、通関業者が勝手にある会社を輸入者と偽って輸入申告をすることを防ぐためです。
輸入申告上は輸入者になっていても、税関は通関業者に納税義務を負わせることができんねん。
例外的納税義務者
例外的納税義務者とは、輸入申告以外の特殊な事情が起こったときに納税義務を負う者のことです。多くのケースがありますが、比較的よく起こるケースや想像しやすいケースを代表例として紹介します。
・保税地域にある外国貨物が亡失したとき
保税地域の許可を受けた者は、保税地域に置かれている外国貨物を適切に管理する責任があります。そのため、ずさんな保管方法によって貨物が紛失した場合、保税地域の許可を受けた者が関税を納付する義務を負います。
・保税運送中の外国貨物が、税関長の指定した期間に運送先に到着しない場合
保税運送の承認を得た者は、運送先の保税地域へ到着させるまでの間、外国貨物を適切に管理しなければなりません。そのため、運送中に紛失などが起こった場合、保税運送の承認を得た者が関税を納付する義務を負います。
・保税地域にある外国貨物が輸入許可を得る前に消費された場合
例えば、誰かが保税地域にある輸入許可前のワインを勝手に飲んだとします。その場合、ワインを消費をした者が関税を納税する義務を負います。
先ほど例に挙げたいずれも、貨物の管理や取り扱いが適切ではない場合に起こると考えられますね。
このような、特例についての基本的な考え方を理解しておけば、特別な納税義務者が誰かということを理屈で覚えやすくなりますので、しっかり押さえておきましょう。
まとめ
今回は、「課税要件」のうち「納税義務者」について解説しました。
納税義務者についての特例はたくさんありますが、特例についての基本的な考え方を知り、丸暗記ではなく本質を理解できるようにしていきましょう。