通関士4-9. 課税要件(1) 課税物件の確定時期と適用法令
カリキュラムの概要
この記事で学ぶこと
- 課税要件の概要
- 課税物件とは
- 課税物件の確定の時期
- 適用法令のルール
- 原則と例外
課税要件の概要
課税要件とは、関税を課すための基本的な条件のことであり、次の4つの要素から構成されます。これらの要素が揃うと、課税が行われる仕組みです。
・納税義務者:誰が関税を納付するのか
・課税標準:課税対象となる貨物の価格や数量はどのくらいか
・税率:どの税率で関税を課すか
課税物件とは
課税物件とは、関税の課税対象になる物のことです。関税法においては、日本へ輸入される貨物が関税の課税対象(課税物件)であると定められています。
輸入貨物が課税対象であるということは、逆に言えば、次の物は関税の課税対象でないということですね。
● 外国貨物の内、海外へ輸出する貨物
● 内国貨物
尚、ここで出てきた「外国貨物」、「内国貨物」、「輸出」、「輸入」といった用語についての理解が曖昧な場合は、関税法の用語の定義についての記事で復習しておきましょう。
課税物件の確定の時期
さて、どのタイミングで課税物件が確定するのでしょうか。
「課税物件の確定の時期」とは、いつの時点における貨物の状態に対して関税を課すかというルールのことです。なぜこのルールがあるかというと、輸入するタイミングによって経済的価値や性質、数量が変化する物品があるためです。
価値が増減する物品の代表例は、貴金属やレアメタルです。貴金属やレアメタルは、国際的な相場が日々変動します。
「いつの時点の貨物(課税物件)に関税を課すか」というルールが明確に定められていることによって、価格が変動する物を輸入する場合にも、公平性を保つことができるのですね。
適用法令
課税物件の確定時期と並んで重要なのが、いつの時点の法令を使って関税を計算するかということです。
課税物件(輸入貨物)に適用される関税等の税率を定めている法令のことを、関税法では「適用法令」と呼びます。
なぜ適用法令についてのルールがあるかというと、法令改正によって税率が変わる日の前後の輸入において、輸入者間の不公平が生じないようにするためです。
関税率は、政治的・経済的・社会的な状況等によって改正されることがあります。
課税物件確定の時期と適用法令のルール
課税物件確定の時期と適用法令のルールには、原則と例外があります。
原則
- 課税物件確定の時期:輸入申告の時
輸入申告の時、つまり輸入者が「このような貨物を輸入します」という意思表示をした時が、関税を課す対象を確定するタイミングと定められています。
- 適用法令の日:輸入申告の日
関税率などの法律の適用は、「〇月〇日から」のような日付が基準となります。そのため、「輸入申告の時」ではなく、「輸入申告の日」という日付が基準として定められています。
例外
輸入申告以外のパターンで関税が徴収される場合は、すべて例外にあたります。具体的には次のような場合です。
● 亡失・滅却
● 保税運送
● 船用品・機用品
● 保税展示場の期間満了
● 郵便物
● 収容・留置貨物
上記の例外のそれぞれに、課税物件確定の時期と適用法令のルールがあります。詳しくは参考書などを参照していただくとして、ここでは課税物件確定の時期の基本的な考え方を押さえておきましょう。
課税物件確定の時期の基本的な考え方は、「税関長が、貨物の性質や数量をチェックする時はいつか」ということです。
例外1:保税運送
外国貨物が保税運送の承認を受けて運送されてきたものの、税関長が定めた期間内に目的地に到着していない場合、次の条件で関税が課されます。
● 課税物件確定の時期:保税運送の承認の時
● 適用法令:保税運送の承認の日の法令
税関長は保税運送の承認をするときに、必要に応じて貨物の検査をして貨物の現状を確認します。税関長はその時に貨物の性質や数量をチェックするため、「保税運送の承認の時」が課税物件確定の時期となっています。
例外2:亡失・滅却
保税地域において外国貨物が紛失したり、税関長の承認を得ずに滅却してしまった場合、次の条件で関税が課されます。
● 課税物件確定の時期:亡失または滅却の時
● 適用法令:亡失または滅却の日の法令
亡失・滅却が発生した場合、保税地域の担当者は税関へ報告をします。
それより早いタイミング(例えば、貨物が保税地域に搬入された時)には、税関職員が貨物を見に行く機会はありません。
そのため、亡失・滅却の場合は、税関長が貨物の性質や数量をチェックするタイミングである「亡失または滅却の時」が課税物件確定の時期となっています。
上記の2つの例を見ると、「税関長が、貨物の性質や数量をチェックする時はいつか」という基本的な考え方がイメージしやすくなると思います。その他の例外もこの考え方に基づいていますので、しっかり理解しておきましょう。
まとめ
今回は、関税の決定のためにとても重要な「課税要件」、「課税物件」について解説しました。関税の仕組みについての基本的な項目ですので、しっかり理解しておきましょう。
また、法令で決まっていることをそのまま暗記するのではなく、「どうしてそのような決まりがあるのか」という視点を持ちながら勉強するようにしましょう。
それにより、本質を理解することができて、例外ルールについての応用もしやすくなることでしょう。