通関士4-12. 関税額の確定(2) 申告納税方式
カリキュラムの概要
この記事で学ぶこと
- 申告納税方式とは
- 申告納税方式の原則と例外
- 納税申告の方法と内容納税額の修正手続き
2種類の関税の確定方式
前回、関税の確定方法には2通りあると解説しました。
- 賦課課税方式:税関長が納付すべき関税額を確定する方式
- 申告納税方式:納税義務者の自主的な申告によって関税額を確定する方式
賦課課税方式が適用されるケースには、税額を輸入者が計算するのではなく税関が計算する方が適しているといった共通の特徴がありましたね。
申告納税方式とは
申告納税方式には、賦課課税方式とは異なる次のような特徴があります。
- 輸入貨物の詳細だけではなく、関税額も輸入者(通関業者)が計算して申告する
- 申告税額の誤りを修正するための、「修正申告」「更正」等の手続きがある
それでは詳しく見ていきましょう。
申告納税方式の原則と例外
申告納税方式には、次の原則と例外があります。
原則
- 納付すべき税額が納税義務者の申告により確定する
- 納税額が0である時も、「納税額は0です」という申告が必要である
納税額が0である時も申告が必要であることに注意しましょう。
例外
- 納税申告すべき事象が起きたにも関わらず、申告が行われていない
- 税額の計算方法や結果が法律に従っていない
- 申告した税額が、税関長の調査結果と異なる
正しい納税申告が行われないという例外が発生すると、税関庁が処分を行うことによって納税額が確定します。尚、ここでいう「処分」とは、「税関長が正しい納税額を計算をして決定する」という行政手続きのことを言います。
納税申告の方法と内容
次に、納税申告の方法と内容について見ていきましょう。
納税申告の方法
「輸入 (納税) 申告書」を税関長へ提出することで、2種類の申告を同時に行うことができます。輸入申告と同時に行う必要があり、納税申告は書面または税関のシステムであるNACCSを使って行います。
納税申告の内容
下記が、輸入(納税)申告書の主な内容となります。主要な項目のみをあげていますが、より詳しい内容は、先ほど紹介した税関ホームページの様式を参考にしてくださいね。
申告書の項目 | 説明 |
輸入者 | 貨物を輸入しようとする者の氏名または法人名 |
代理人 | 通関業者名 |
仕出人 | 貨物を輸出した海外の会社名 |
船荷証券番号 | B/L番号またはWay Bill番号 |
品名 | 貨物内容の一般名 |
番号、統計細分 | 税表番号(HSコード)、関税率を決めるために重要な分類番号 |
正味数量 | 輸入する物品の梱包材を含まない重量や容積、個数等 |
申告価格(CIF) | インボイス価格に運賃や保険料等の金額が含まれていない場合は、それらを加算した後の金額 |
税率 | 関税率 |
関税額 | 課税標準と税率で算出した関税額 |
通関業者による代理申告
納税申告では、上記のように多岐にわたる内容を税関へ申告する必要があります。しかし、通関に携わったことがない人にとっては、どの項目に何を記載するべきか判断するのが難しいでしょう。
また、申告価格や税額については、計算方法のルールを理解していないと正確な金額を算出することができません。自ら正しい申告をすることは難易度が高いため、ほとんどの輸入者は通関業者に申告を依頼します。
通関業者に代理申告をしてもらうことにより、輸入者の負担を軽減することができるのですね。
納税額の修正手続き
納税申告方式においては、例え通関業者であっても、必ずしも正しい納税申告ができるとは限りません。もし、納税申告の内容が誤っている場合はどうなるのでしょうか。
関税法では、納税申告が行われた後に納税額を修正するための手続きが定められています。それらの手続きを順番に見ていきましょう。
修正申告
申告した納税額が過少である場合に、納税額を修正する手続きを修正申告といいます。
修正申告ができる場合
修正申告ができるのは、納税申告で申告した納税額に不足がある時のみです。これはとても重要なポイントですのでしっかりと理解しておきましょう。
例えば、次の場合には修正申告をすることはできません。
● 申告価格に誤りがあるが、納税額に不足がない場合
● 適用するHSコードを誤ったが、納税額に不足がない場合
修正申告の手続き
修正申告の手続きは、輸入許可前と輸入許可後で異なります。
輸入許可前に、修正申告をするパターンがあるんですか?
輸入許可前の場合は、こういった連絡が来た後に、申告者が申告内容を修正します。このことを「補正」と言います。補正は修正申告の種類の内の一つです。
一方、輸入許可後に修正申告が必要なパターンは、輸入許可後に輸入者または通関業者が納税額の誤りに気付いた場合などです。税関に「誤った申告内容で輸入許可が下りたので、修正申告をしたい」と申し出て、修正申告を行います。
決定
決定とは、納税申告が必要であるにも関わらず、なかった場合に、税関長が税額を決定する処分のことです。決定が行われるのは、例えば保税地域にある食品が納税申告の前に消費されてしまった時です。
この場合、輸入・納税申告が行われていませんが、消費された食品は輸入されたとみなされます(「みなし輸入」と言います)。納税申告が行われずに消費(輸入)されてしまった場合は、税関長が関税額を計算して消費した者に関税を納付させるのです。
更正
更正とは、申告された税額に誤りがある場合に、税関長が正しい税額に修正することです。
税関長が申告内容の誤りに気付いて更正をすることもあり得ますが、次に説明する更正の請求をきっかけにして更正を行うことが多いです。
更正の請求とは
納税申告で申告した納付税額が過大である場合に、申告者が税額の変更を請求する手続きのことを更正の請求といいます。
具体的には、輸入者又は通関業者が「関税更正請求書」を税関長へ提出することで、更正の請求を行うことができます。この際、税額が過大であったことを証明する書類や資料も必要になります。
更正の請求の期限
更正の請求ができる期間は、輸入許可の日から5年以内です。
ただし、更正の請求をしようとする場合はできるだけ早く税関に申し出ることが好ましいです。
なぜなら、税関が更正の請求を受理するためには、税額が過大であったことを客観的に証明するための様々な書類や資料が求められるためです。輸入許可からの日数が長くなるほど、それらの資料を集めることが難しくなります。
過大に納税したことに気付いた場合は早めに税関に相談しましょう。
まとめ
今回は2つ目の関税確定方式である、申告納税方式について解説しました。
申告納税方式では、輸入者または通関業者による申告の正確さと、税関の審査によるチェック機能が正確な納税のために重要となることを理解しましょう。